コルクとブショネ~天然コルクはワインの栓として最良なのか?~
普段たくさんのワインを開けていると必ず、「当たり」に出会います。
「当たり」には2つあり、1つは美味しい良質なワインに出会ったとき。
もう1つはブショネです。
ブショネとは主に天然コルクが原因で起こるのですが、現在様々なワインの栓がありながらなぜ天然コルクがほとんどのシェアを占めているのか、
今回はそこを考察していきます。
「はじめに~コルクはどのように作られる」
まず、コルクの作られ方ですが、コルクはコルクオークという木から生成されます。コルクの収穫は主に1位がポルトガルで2位はスペイン。ポルトガルのコルク世界シェアは50%ほどで、森林面積は70万ヘクタールほど。国内の経済の基盤を担っている産業です。
コルクオークで作ると言っても木を伐採するのではなく、木の樹皮を剥がして作られます。
こんな感じ↓
樹皮をはがした後は適当な大きさに樹皮を断裁し、樹皮の厚みを利用して穴をあけ、コルクとして取り出していきます。
こんな感じ↓
木を植えてから初めて樹皮を収穫できるようになるまでには最低25年以上かかります。収穫後、次の皮を収穫できるようになるまでは10年ほど待たなければいけません。これを繰り返し200年程でコルクの木は寿命を終えます。
コルクは高価で限りある資源なのです。
「コルク以外の栓」
コルク以外の栓ではスクリューキャップなどが有名ですが現在はそれ以外にも様々な種類の栓があります。
①スクリューキャップ
オーストラリア、ニュージーランドでは大半を占めるスクリューキャップ。
その他のニューワールドでも積極的に採用され始めています。
コルク以外の栓ではプラスチックコルクと並んでシェアが高い。
ソムリエナイフがなくても開けられることが利便性としてあげれられますが、長期保存に耐えられるかどうかは現在では定かではありません。
②プラスチックコルク
合成コルクと言われ、樹脂などでできているもの。
吸盤のような張り付き感があるので、抜栓時に力がいる事と、酸素透過性がないので長期熟成ワインには向きません。
③ガラス栓
ガラスと樹脂でできた栓です。栓を引きあげるだけで簡単に開封でき、再び栓をすることも可能です。色んなボトルに対応可能で洗って再利用も可。
以前知っていたワイナリーがこちらを使用していたのですが、
寒い地域に出荷したところ、樹脂の部分が寒さで縮んで固まり、密閉性がなくなり、ワイン漏れがおきたので、使用をやめたという話を聞きました。
④王冠
ビールのような王冠スタイル。
開けたらもちろんフタはできませんが、低コストで作ることができます。
珍しいタイプですがオーストラリアのワインで一度見たことがあります。
⑤DIAM
天然コルクに近い形で作られているコルク栓。
乾燥させたコルクを洗浄・煮沸し、細かく球状に破砕し
高圧、高温を加えたのち、接着させるというもの。
天然コルクより低価格で酸素透過性は天然コルクよりかなり低くなります。
「それぞれの栓の価格」
ちなみにそれぞれの栓でボトル1本あたりにかかる値段は下記の通り。
(小規模ワイナリー参考、大規模だともう少し安くなる)
・合成コルク 8.5円~30円
・スクリューキャップ 12円 (もう少し安価な代替えもあり)
・DIAM5(DIAMの横の数字は耐性年数を表す。これだと5年) 20円
・DIAM10 (耐性年数10年) 26円
・天然コルク 36円~48円
・ガラス栓 54円~133円
このように、プラスチックコルクがダントツで安いんですが、スクリューキャップも安定して安価でできるようです。
天然コルクはやはり高価ですね。
ガラス栓がダントツで製造コストがかかるので、これではいくら再利用できるとはいえ、普及しにくいのがわかります。
「天然コルクで問題になるブショネ」
コルク以外の栓が生まれたきっかけは「ブショネ」を払拭したいからに他なりません。そもそもブショネ、正しく理解していますか?
ブショネ=カビと考えている方多いかもしれませんが、厳密には違います。
ブショネ臭を発するのは、トリクロロアニソールという(以下TCA)
塩素化合物で、このTCAが不快な匂い(カビの匂い)を発生させて、
ワインにその匂いの影響が及んでしまうのです。
この現象がおきたワイン、もしくは現象をブショネといいます。
よくキャップシールを剥がしたときにコルクの周りにカビがついていることがありますがこれは拭き取れば問題なく、
「カビが生えているからブショネだな」と捉えるのは全くの間違いです。
ではTCAはどの様に発生するのか。
これはワインを造る工程やコルクを作る工程で塩素系の消毒液や防腐剤を使う事でバクテリアと塩素が化学反応を起こし、TCAに変化します。
コルク企業やワイナリーの努力により現在TCAはかなりの減少傾向にあるものの完全に防ぐことは不可能だと言われています。
「コルク栓の是非」
少し難しい話をしましたが、ではなぜブショネの危険性があるにもかかわらず、天然コルクがつかわれているのか。
それはコルク栓が出来て他の栓にはできないことがあるからです。
①酸素の透過
天然コルクは不完全密封です。微量ながら酸素を通し、
ゆっくりとワインを熟成させていくことができます。
ただし、酸素透過による熟成の捉え方には個人差があり、
天然コルクよりもDIAMのほうがいいとする人もいれば、
スクリューキャップの方が酸素を通さず、
安定して熟成させることができると考える生産者もいます。
②温度変化、振動に強い
天然コルクがもつ本来の弾力性や呼吸する木の性質を生かし、
急激な温度変化や振動にも柔軟に対応できると考えられています。
プラスチック栓などは熟成において液漏れや酸化の報告も多くあり、
長期熟成には天然コルクが耐久性があるという結果が出ています。
③廃棄しやすい
原料は樹皮なので、廃棄する場合に分解できないような
人工物が発生しません。リサイクルもしやすくエコ。
④天然コルクならではの高級感
ワインといえば天然コルク。
天然コルクでない栓ではワインに高級感がでないという人が
未だに多く存在し、また生産者の多くも同じことを考えています。
「まとめ」
天然コルクによるワインの劣化は1%とも、10%とも言われています。
またTCAを生成するバクテリアはワイン樽やガラス瓶内、段ボールの中にも存在し、天然コルクを変えたからといってワインのブショネが完全になくなるわけでもありません。
ただブルゴーニュの生産者、ポンソやパトリス・リオンなどがスクリューキャップの優位性を見出し、ニューワールドのみならず、歴史ある生産者も
天然コルク以外の栓を取り入れはじめているのも事実です。
酸素の透過性や耐久性においては生産者や専門家により意見は様々あり、
現状は天然コルクによるはっきりとした被害とメリットを未だ判断出来ていないのではないでしょうか?
しかし、ブショネによるワインの劣化、損失は確実に存在するにもかかわらず、生産者が天然コルクに拘る理由はワインの雰囲気を大事にしたいと考えているように思います。
天然コルクには天然コルクの、その他の栓にはそれら特有の利点があります。栓によってワインのイメージが決まることがあってはなりません。
ただ個人的には、天然コルクを抜いて香りを嗅ぐ行為や、ヴィンテージものの天然コルクを緊張して抜栓したり、逆さにして栓をする情景などは天然コルクならではで、ワインを美味しく飲むにはそういった雰囲気は不可欠ではないかとも思います。
故に、天然コルクが完全になくなってしまうのはワインラバーとして
少し寂しい気がします。
リスクはあれど、やっぱり、個人的には天然コルクが大好きです(笑)
「おまけ?~抜栓したコルクの行方に責任を」
おまけ、でもないのですが、、、、大切なことです。
高価で限りある資源でもある天然コルク、抜いたらゴミ箱へ直行なんてことありませんか?
ワインを扱うものとして、抜栓した後のコルクの行方も気になります。
今までは捨てていたのですが現在は集めてリサイクルしています。
普段ワインの恩恵を受けているからこそ、瓶やキャップシールにいたるまできちんと最後まで廃棄に責任を持ちたいものです。
リサイクルを請け負っている会社もあるので、集めてリサイクルしたり、DIIYするのもいかがでしょうか?
ここではそんなリサイクルやDIYで参考になるサイトを紹介します。
・日本コルクリサイクル協会
コルク栓の回収、リサイクルを促進することで、良質なコルク素材、商品に再生する活動をしている協会。メールで問い合わせすればリサイクル用コルクの送付先など教えてもらえる。
http://re-cork.jp
・リカーマウンテン
酒屋のチェーン店であるリカーマウンテンの店舗に持ち込めばリサイクルしてくれる。
https://www.likaman.co.jp/recycle/recycle11.html
・TOKYO CORK PROJECT
都内の飲食店に使用済みのコルクを入れる箱を設置して回収をして、再生をする取り組みをされている会社。
http://tokyocorkproject.jp
・コルクワールド
コルクを使った商品の開発などを行っている。
持ち込んでオリジナルの製品などを作ってもらえるようです。
https://corkworld.tera-jp.com/product/recycle.html
・リコルクプロジェクト
愛知周辺を中心に飲食店で集めたコルクでリサイクル商品を作っています。
http://www.recork.jp/recorkproject2.html
・ワインコルクのDIY
ワインコルクのDIYのバターンが掲載されています
https://roomclip.jp/mag/archives/4213
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